日本は先進国でも、医療保険制度がとても整っている国です。
2000年には、世界保健機関(WHO)から日本の保険制度は「世界一」という評価を受けています。
今回は日本の医療保険について、ざっくり解説していきます。
日本の医療保険制度について
日本に住む人は、誰もが「国民皆保険」という制度に守られています。
という若い人がいますが、そんなことはありません。
民間の生命保険会社が提供する「医療保険」に入ってないだけで、手厚い国の保険制度に入っているんです。
では、どんな仕組みに守られているのか、見ていきます。
国民皆保険で、医療費は3割負担
国民皆保険とは、全ての国民は何かしらの医療保険に加入し、医療費を支え合う仕組みのことです。
医療保険には、次の3つがあります。
■ 被用者保険 サラリーマン・公務員などが加入
■ 国民健康保険 自営業者やサラリーマンを引退した人が加入
■ 後期高齢者医療制度 75歳以上の人が加入
日本で一定の条件を満たして生活していれば、誰でも入ることになります。
この保険に加入することで、保険証を持つことが出来ます。
そして保険証を持っていれば、原則次のような自己負担額になります。
75歳以上 | 一般・低所得者 1割負担 | 現役並み所得者 3割負担 |
70歳~74歳 | 一般・低所得者 2割負担 | |
6歳~69歳 | 全ての人 3割負担 | |
義務教育就学前 | 2割負担 |
つまり現役世代で被用者保険の場合、1万円の治療費がかかっても、自己負担額は3割の3千円となります。
高額療養費制度で更に負担が軽くなる
医療費が1万円くらいなら、保険証の効力(3割負担)だけで何とかなりますが・・
手術や高額な薬の処方などは、医療費が100万円を超えるケースも出てきます。
このような高額医療費の負担を軽くしてくれる制度が「高額療養費制度」です。
例えば年収が450万円のAさんが、100万円の治療費がかかったとします。
すると保険証を持っていたので、医療費は一旦3割の30万円になります。
そして高額療養費制度を利用することで、約8万円の自己負担額となるんです。
高額療養費制度も保険証を持っていれば、誰でも利用できる制度です。
では、この「約8万円」はどのように計算されるのか見ていきます。
【高額療養費制度】年収別支払い金額
高額療養制度は69歳までの人と、70歳以上の人で区分が別れます。
まずは69歳までの、区分から見ていきます。
69歳までの人
収入 | ➀ ひと月の上限額(世帯ごと) | |
➁ 1〜3回目 | ➂4回目以降 | |
年収約1,160万円以上 健保:標準報酬月額83万円以上 国保:基礎控除後の総所得901万円超 |
252,600円 +(医療費−842,000円)×1% |
140,100円 |
年収約770万~約1,160万円 健保:標準報酬月額53万~79万円 国保:基礎控除後の総所得600万~901万円 |
167,400円 +(医療費−558,000円)×1% |
93,000円 |
年収約370万~約770万円 健保:標準報酬月額28万~50万円 国保:基礎控除後の総所得210万~600万円 |
80,100円 +(医療費−267,000円)×1% |
44,400円 |
〜年収約370万円 健保:標準報酬月額26万円以下 国保:基礎控除後の総所得210万円以下 |
57,600円 | 44,400円 |
住民税非課税者 | 35,400円 | 24,600円 |
年収500万円のAさんの例で、上の表を説明してみます。
■ Aさんは、今年の1月、手術、検査、薬代で医療費が50万円かかりました
■ 高額療養費制度で、Aさんが支払う額は・・【 80,100円+(500,000円ー267,000円)×1% 】= 82,430円
■ Aさんは、妻のBさんと、高校生の息子Cさんがいます
■ Aさんは、今度は3月に怪我をして治療費に20万円かかりました
→自己負担額は3割の6万円
■ 妻のBさんも3月に、体調を崩し治療費に10万円かかりました
→自己負担額は3割の30,000円
■ さらに息子のCさんも3月、部活で怪我をして治療費に7万円かかってしまいました
→自己負担額は3割の21,000円
■ ひと月の上限額は世帯ごとなので・・【80,100円+(370,000円ー267,000円)×1%】= 81,130円
70歳未満の人は、1回の自己負担額が21,000以上でない支払いは合算されません
息子のCさんが、20,000円だったら、このケースでは合算されません
■ 過去12ヵ月間の間に、高額療養費制度を3回利用した場合、4回目から上の表、➂「4回目以降」の金額に減額されます
■ Aさん家族はこの後、6月にも高額療養費制度を利用しました
■ そしてAさんは10月にも大けがをして、10万円の治療を受けました
■ 10月から遡って12ヵ月以内に1月、3月、6月の3回に渡り、高額療養費制度を利用しているので・・今回(4回目)の自己負担額は、44,400円に減額されました
次は70歳以上のケースを見ていきます。
70歳以上の人
収入 | ひと月の上限額(世帯ごと) | |||
外来 (個人ごと) |
1〜3回目 | 4回目以降 | ||
現役並み | 年収約1,160万円以上 健保:標準報酬月額83万円以上 国保・後期高齢者医療制度: 課税所得690万円以上 |
252,600円 +(医療費−842,000円)×1% |
140,100円 | |
年収約770万~約1,160万円 健保:標準報酬月額53万~79万円 国保・後期高齢者医療制度: 課税所得380万円以上 |
167,400円 +(医療費−558,000円)×1% |
93,000円 | ||
年収約370万~約770万円 健保:標準報酬月額28万~50万円 国保・後期高齢者医療制度: 課税所得145万円以上 |
80,100円 +(医療費−267,000円)×1% |
44,400円 | ||
一般 | 年収156万〜約370万円 健保:標準報酬月額26万円以下 国保・後期高齢者医療制度: 課税所得145万円未満等 |
18,000円 (年間上限は 144,000円) |
57,600円 | 44,400円 |
住民税 非課税等 |
住民税非課税世帯 (A 以外の方) |
8,000円 | 24,600円 | ー |
A 住民税非課税世帯 ( 年金収入80万円以下等) |
15,000円 | ー |
障害などで70歳未満でも「後期高齢者医療制度」に加入している人も、こちらの表の通りになります。
この区分では、一般の人の年収を「156万〜約370万円」と設定しています。
一般・低所得者の区分には「外来(個人)」という枠が設けられています。
70歳以上の人は一般的に、通院数が増えるという見込みです。
70歳から74歳までの人の「医療費2割」、75歳以上の人の「医療費1割」だとしても、通院が多くなると負担が大きくなります。
その場合に適用される「70歳以上の高額療養制度」では・・
外来のみ(個人)
■ 通院での医療費(院外薬局の薬も含む)が、ひと月に18,000円を超えると、超えた分が返ってくる
打ち止めになります
外来・入院(世帯)
■ 世帯合計で「通院」と「入院」合わせて、ひと月57,600円を超えた分が返ってくる
住民税非課税世帯の人は、4回目以降の減額はありません
【高額療養費制度】落とし穴と豆知識
高額療養費制度の対象とならないもの
高額医療費制度でも、対象とならず「別途自己負担」となるものがあります。
これらの代金は、高額療養費制度の自己負担額と別途支払います。
「2)差額ベッド代」は基本的に希望した場合に支払うものです。
入院のときに書く書類に紛れてサインさせられる事があるので気をつけましょう。
部屋・ベッドに関する書類にサインしなければならない時、余白に「大部屋希望」と書くと意思表示となり、「差額ベッド代」の支払いを免れる可能性があります。
月をまたぐと「高額療養費制度」自己負担額、2倍支払う可能性
高額療養費制度は、ひと月にかかった医療費を助成する制度です。
毎月1日から月末までの期間内で見ます。
2週間の入院で、5日に入院して19日に退院なら問題ありません。
しかし
※ 年収350万で50歳の人のケース
■ 前月分に50万円、今月分で30万円の医療費だったとします
■ 月をまたいでいるので、先月分の自己負担額57,600円、今月分の自己負担額も57,600円を支払い、合計で115,200円の自己負担となりました。
■ もし5日に入院、19日に退院の日どりなら、自己負担額は57,600円でした
入院は月をまたいですると、このように高くつくことが考えられます。
急を要する緊急入院なら仕方ありませんが、予め予定日を決められるのなら、またがない方が安くつきます。
【高額療養費制度】手続き方法
高額療養費制度を利用するには、健康保険証に書いてある電話番号に問い合わせ、書類を取り寄せ病院に提出します。
本来は一旦、治療費の3割ににあたる分を病院で支払って、3〜4ヶ月後に高額療養費の自己負担額を超えた分が振り込まれるという仕組みです。
しかし平成19年にできた仕組みにより、事前に立て替えなくても良いようになりました。
それが「限度額適用認定証」です。
この「限度額適用認定証」を病院の窓口に提示する事で、高額療養費制度の自己負担額だけを支払えば良くなります。
限度額適用認定証の申請用紙は、手元に保険証が有れば書ける程度の簡単なものです。
1つ注意する事は、限度額適用認定証はその月の分しか適用されないので、月をまたがないように、速やかに申請してください。
こちらの厚生労働省の資料も参考にしてみてください。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/100714a.pdf今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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