8050問題・・
50歳代の引きこもりを、80歳代の親が不要しているという社会問題ですね。
ここ最近この問題をかかえた当事者が、事件を起こす事例が多発して、同じような問題を抱える家族はもちろん、今時点ではそうではない第三者が見ても気持ちが重くなるような社会の懸案です。
本当にこの問題は根が深すぎて、解決策はなかなか見いだせないように思えます。
連鎖する「引きこもりを抱えた家族」の殺人事件
2019年5月28日、川崎市登戸駅付近で引きこもりの50代の男がスクールバスを待っていた小学生と保護者を次々と刺し、2日が亡くなった事件をきっかけに8050問題というのが新聞やニュースで見聞きするようになりました。
すると連鎖がおこったかのように、次々と引きこもりを抱えた家族の間で事件が発生。
3日後の31日には福岡で引きこもりの40代の男が母親の頭を鈍器でなぐり、妹の胸を刺し、自らは自殺をするという事件が起こりました。
翌6月1日には東京練馬区で、70代の元農林水産省事務次官が、引きこもりの45歳の息子の胸を刺し殺害してしまうという、これも家族間の事件が起こります。
この事件では殺害された長男は、一人で暮らしていたのが1週間前に自宅に戻ってきたばかりでした。
その後、両親に暴力をふるい、近くの小学校の運動会の音がうるさいと、「小学生を殺してやる」いう趣旨の発言をしていたと言います。
父親は登戸の事件を懸念した、とも話しているそうです。
またその翌日、6月2日には東京江東区で、29歳の男が面識のない祖父の首や背中を複数回刺し、殺人未遂で逮捕されました。
この事件では、男は実家で家庭内暴力を繰り返し、4~5年前から住処を転々としていたそうです。そして久しぶりに実家に帰ると祖父から罵倒され、頭にきて祖父の家を調べて襲ったと言います。
きっと一連の事件で、引きこもりを抱えた家族は「明日は我が身」という感じでかなり敏感に反応してしまっているんだと推測できます。
その不安がつのり、殺人という最悪の選択に至ってしまったり、強い口調で諭したり注意したりしてしまっているのかもしれません。
何が問題を難しくさせているのか
引きこもる理由は人それぞれ
下の図は厚生労働省のホームページの内容です。
簡単に言うと、引きこもりとは6か月以上学校や会社に行かず、家族以外の交流を絶った状態の事だそうで、ずっと部屋にこもったりしていなくても、コンビニや散歩など外出をしたとしても、外部の人との接触を避けている状態は、やはり「引きこもり状態」だそうです。
2019年3月に内閣府は、「中高年の引きこもり調査」をはじめて実施しました。
40歳~64歳の高齢引きこもり者は、なんと全国で61万3千人もいるという驚きの調査結果でした。
そのうち7割以上が男性で、下のグラフが引きこもりになった年齢を表しています。
引きこもった年齢、60歳~64歳の17%は最も多いのですが、これは定年退職した後引きこもってしまったのでしょうか。
勤めあげて年金生活に入ったのなら、問題は少なそうですが会社以外の交友は大事にしないといけないのが解ります。
ひきこもりの期間は7年以上が半数を占め、長期化、高齢化が進んでいるようです。
引きこもりになったキッカケでは、下図のように「退職」が一番でした。
このように、一言で「引きこもり」と言っても様々な理由や、バックボーンがあるわけで、対処法も人それぞれ違ってくるのは当然です。
引きこもる人とそれを諭す人との、思考のギャップ
例えば50歳の息子さんが引きこもっていたとして、80歳の親は焦燥感や不安を持つと思います。
そこで働くように外に出るように諭したり、注意したとします。
しかし、同じ目線で議論しているつもりでも、言わんとしたことの半分も伝わってないケースがあると考えられます。
いろいろな事を経験してきた親にとっては「言わずもがな」当たり前の事柄が、引きこもる本人にとっては「当たり前じゃない」し、経験していないから理解ができない。
今回の事件でも「注意されて頭に来た」とか「罵倒されて頭に来た」とか、注意されたことの内容よりも「注意された」=「自己否定された」という印象だけが残るようです。
家族や身内故の甘えとも相まっているのか、かなり自己中心的な思考になってしまっているようです。
これでは、議論にもなりません。
体力的に衰えを否めない、親たちは諦めの窮地に追い込まれてしまいます。
引きこもる人は失うものがない、未来に漠然とした不安がある
それに対して、引きこもりの張本人は自分の未来にも希望が持てず、自暴自棄になっているケースも少なくありません。
東京練馬の事件では、殺された息子さんはネットでの書き込みで「(親は)勝手に生んだんだから,死ぬ瞬間まで面倒を見るのは当たり前」と言っていました。
その上守るものもないわけですから、突拍子もない、予想もつかない大事件をおこしても本人的には問題ないわけです。
むしろ、大きな事件にすることによって、歪んだ自己主張、自己肯定感の満たし方を求めているのかもしれません。
このような人をネット民では「無敵の人」と呼んでいます。
家族が故の甘え
一般的に見ても、怒りを抑えるという行為は自分との縁が遠い人ほど我慢ができます。
それは「自分を理解してもらいたい」という気持ちが薄くなるからではないでしょうか。
縁が近い間柄ほど、喧嘩が多くなります。
夫婦喧嘩はいい例です。
縁が近いと甘えが出る分、こちらの欲求を満たしてもらおうという願望が強く働きますね。
ここでキーワードが出てきました。「自分を理解してもらいたい」という願望です。
引きこもりの人にとって、人間関係の多くは家族です。
部屋にこもってSNSやソーシャルゲームにはまっている人は、同じ価値観を共有することによって、「解ってもらえる人」と繋がっていたいのではないでしょうか。
でも所詮、インターネット上の「解ってもらえる人」たちは、自分にとって「こちら側の人」です。
身近な社会の人である家族から、解ってもらう、認めてもらいたいという欲求がそこにはありそうです。
解決策はあるのか
元農林水産省の事務次官をやっていたようなキレ者の人でさえ、「殺人」という選択肢を選んでしまうほど、解決は簡単ではない問題なんですよね。
この事件について「家庭内暴力があるなら、警察に言えば・・」と言う人がいますが、警察に言っても長くは拘束されないので、家に帰って来たあと逆恨みで報復をされる心配があると思うんです。
初めの一歩は、上記にあげた「自分を理解してもらいたい」という欲求を徐々に満たしていく事かもしれません。
かと言って、7年以上引きこもり歴がある方が半数もいるわけですから、その壁は簡単には溶ける訳ではないでしょう。
家族だけで悩んでいるより、「ひきこもり地域支援センター」のような専門機関に相談して助けを求めるのも1つの手段です。
民間機関の支援施設の中には、不当賃金での労働や監禁など、嫌な話が出てくる施設も聞きます。
施設に入れるのではなく、パソコンを使ったテレビ電話でプロのカウンセラーが本人とお話しすることによって、徐々に氷を溶かすというサービスもあるようです。
とにかく家族で悩みを抱え込むより、専門家の力をフルに活用して見る事を考えてみてはいかがでしょうか。
今回も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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