もしかしたら、うちの子が、うちの旦那が、妻が鬱になったかもしれない。
そんな事態に見舞われたら、どんな気持ちになりますか?
それはもちろん、家族ですからショックだし、受け入れたくもないでしょう。
しかし家族が冷静になって、しっかりと現実を受け入れて、早く手を打つのです。
鬱の知識をしっかり持つ事からはじめよう
今や、日本の社会では15人に1人が1度は鬱に罹った経験があるそうです。
そんな身近な病気でも、その症状や治療など意外と知られていないのが現状です。
また、鬱になった人を「精神的に弱い」とか「真面目過ぎて融通が利かない人」などと間違った解釈で、見下すような発言をする人までいます。
そもそも、鬱になるタイプの人は責任感が強く、他社の為に頑張れる人が多いのに、ぶら下がり族に限って先のような悪口を言う物です。
鬱になり易いタイプ 3つ
鬱になり易いタイプの人がいる、という事が解っています。
これは、「病前性格」と言われます。
この3つのタイプは単独でもなり得ますが、複数重ね持っている人も少なくありません。
1. 真面目で完璧主義
他社からの期待を裏切れない、という責任感が強い人に多いです。
仕事でも、確認に確認を重ねて行います。
しかし、これは前向きな「挑戦」として行っているうちは良いのですが、次第に「失敗できない」というプレッシャー、強迫観念へと繋がりかねません。
2. 頼りにされる存在
責任感が強く、仕事も完璧にこなしていると、当然周囲から当てにされるようになります。
すると、どんどんと自分のキャパを越して仕事が舞い込んで来ます。
付き合いや接待も、増えて行くでしょう。
こうなると、自分の時間や家族と過ごす時間も犠牲にすることが多くなるかもしれません。
3. 自分を責める傾向がある
鬱になり易いタイプの人は、自分を責める、自分のせいにする、自分の価値を低く評価する特徴があります。
物事を完璧にこなし、他者から当てにされているのに、自己評価はグンと低いんです。
鬱病の人に見られる特徴で「自責念慮(じせきねんりょ)」というものがあり、「自分なんかが居ては申し訳ない」といった自分の存在理由まで否定するという症状です。
これは病前性格が、極端にでるケースと思われます。
つまり、謙虚で仕事ができて、お人よしという、とても好い人がなり易いのです。
初期症状で周囲が気付くことが大事
鬱は、本人も気付かないうちに密かに精神を蝕んでいきます。
始めは、「なんか気分がすぐれない」という感じから、「何かとやる気が起こらない」となり、そして「もうだめだ」という絶望感が襲います。
できるだけ早い段階で、周囲の人は気付いてあげることが大事です。
しかし、鬱になりやすい人は、責任感が強いので、そのような弱みや弱音、心配されるようなことを悟られないようにするでしょう。
だから知識を持って、小さな変化に気づくことが大切です。
治療は早ければ早い程、重症に陥りにくくなり、回復も早くなると言われます。
先に書いたように、完璧主義で頼られる存在ともなると、どんどんキャパを超えた仕事や付き合いが舞い込みます。
すると完璧主義は次第に強迫観念となり、オーバーワークによって体力的にも精神的にも追い込まれて、いつしかバーンアウト(燃え尽きて)してしまいます。そして、抑うつ状態になってしまいます。
「抑うつ」とは、”気分が落ち込んで滅入る”、”何をするのも億劫に感じる”、”理由もなく悲しい”、”興味が湧かない”、”楽しいと感じない”、などの精神状態に陥ることです。
人間の頑張りには限界があります。その臨界点を超えたとき、何もかもが虚しく思えてきて、鬱が発症するのです。
しかし、周囲が鬱と思っていても、本人がそれを認めることを拒み、逆切れするケースは多くあります。
「病院へ行こう」「仕事をセーブしよう」「会社を休もう」と言っても本人は、競走馬のように視野を遮られ、”まっしぐらに走らなければいけない”という強迫観念を持ってしまっていることが往々にあります。
これが鬱の人の心理なのです。
鬱の進行パターン
一概には言えませんが、鬱にかかると次のような3段階を経て回復へ向かうとされます。
また、鬱は治っても再発の恐れがあるので、生活習慣には気を付ける必要があります。
前兆期
最初は、気分が落ち込む事が続くという程度。
気分の落ち込みは誰にでも起こるが、2週間続いたら要注意。鬱にかかっている可能性は大きいです。
そして、襲いかかる絶望感と強迫観念。
しかし、絶望感に関しては他人から見ると「えっ?そんなこと?」というような、些細な事だったりします。
強迫観念も本人にしたら、「絶対的に果たさなければならない」ことでも、他人からは大した事ではないように思えます。
でも、この時期は些細な事でも傷つきやすいため、安易な否定は避けるべきです。
理由もないのに悲しくなったり、悲しくないのに涙が出たりします。
この段階で、早く治療を開始することによって、最悪期の症状を和らげることが可能になることがあります。
最悪期
治療によって最悪期の症状を軽くすることもできますが、本人にとってはどん底であることに変わりありません。
ほぼ気力を失われている状況です。
布団から抜けれず、人と会うのもわずわらしいといった症状を耳にすることがありますが、これらはこの最悪期の症状です。
この症状に見舞われて初めて、病院に行くケースが多いのですが、治療は少しでも早い方が有効です。
この時期は家に引きこもり、何もすることが出来ません。しかし、何もできない自分に対して、自己否定感に駆られ、焦りとイライラも募ります。
寛解期
寛解とは、少し症状が上向きになってきたことを示します。
しかし、上向きとは言え、気分の上下はまだ続きます。これを本人も周囲の人も、知っておく必要があり、いたずらに急がない事です。
この時期はある程度、気力の回復が見込まれる分、落ち込んだ時の本人のショックは大きく、最悪、衝動的な自殺をする場合もあるので、周囲は注意が必要です。
また寛解には個人差があり、人によってケロリと回復する人もいれば、低空飛行を長く続ける人もいます。
この段階を乗り越えて、回復となりますのでしっかりと治療をしましょう。
鬱の治療とは、この前兆期から寛解期までの期間をより短く、症状を軽くすることを目的としますので、治療すれば直ぐ治るというものではありません。
鬱の人の気持ちを知る
鬱の人の気持ちは端から見て、推測するだけでは足りません。
代表的なもので、次の3つの傾向がありますので、心得ておくと参考になると思います。
不安感
他人から見て大したことがない事でも、最悪のストーリーを先走って妄想し、絶望感に陥ったりします。
よくあるケースで、自分はリストラされず、生き残り組だとしても、「次は絶対俺だ」と根拠ない不安に駆られて鬱になる人もいます。
リストラをした会社は、残された人がオーバーワーク状態になり、上記のような思考になることがよくあるようです。
鬱の人の話を否定したり、笑い飛ばしたりせず、親身に聞いて、一緒に解決策を考えましょう。
焦燥感
鬱の人を見ていると、端からはぐったりしていて、鈍く見えることがあります。
しかし本人は「どうにかしなくては」と焦りで一杯になっています。
その焦りとイライラは、グルグルと自分の中で絶えず駆け巡り、精神的に疲れ果てているものです。
それが、極端な自己否定に繋がっていくのです。
億劫感
「何もする気が起きない」「布団から出ることすら出来ない」症状は鬱病の代名詞的な症状で知られています。
しかし、本人の中では、この何もできない自分に苛立ちを持っているのです。
また、億劫感が一番長く、患者の心に居座ると言います。
だから、他人からは治ったように見えても、本人が治った感じがしないのは、この億劫感が居座っているためと言われます。
鬱の原因3つ
鬱になる仕組みは、正確にはまだ解明されていません。
しかし、以下の3つの原因が指摘されていて、そのうちの1つ、もしくはそれ以上の合わせ技で鬱を発症すると考えらえています。
生物学的要因
脳内の情報伝達物質、「セロトニン」、「ノルアドレナリン」、「ドーパミン」の分泌量の変化によって、躁状態、鬱状態になると解っています。
気持ちと、情報伝達物質の相関関係は下図のとおりです。
性格的要因
病前性格で紹介したように、「完璧主義」「頼られやすい」「自分を責める傾向がある」などの性格が起因するものです。
鬱は回復しても、常に再発の可能性があります。
だからこそ、断ることを覚えたり、落胆的な考えを身に付けるなどして、性格も変えていく努力が必要かもしれません。
環境的要因
身の回りの環境の変化に、気持ちが対応しきれずに鬱になるケースもあります。
親しい人を亡くしたり、最近よく耳にする「◯◯ロス」などで強烈な喪失感を味わうケース。
また環境変化の中でも、昇進や、結婚といった人からは羨ましいと思えるような環境の変化でも、心がプレッシャーや責任感に押しつぶされて、鬱になるケースもあるようです。
まとめ
鬱は「鬱にならないための予防」と「鬱になったら、それ以上悪化させないことを考える」こと。
そして「再発させない」を考えていかないといけません。
私の元同僚で、家族全員が鬱で苦しんでいる方がいます。
始めは奥様からでした。
そして、元同僚、2人の子供たちと鬱になっていきました。
鬱は決して軽く見てはいけません。そして本人には「頑張れ」とか頭ごなしの否定も良くありません。
しかし、家族が引きずられてもいけません。常に明るく自然に振る舞ってこの難局を乗り切りましょう。
鬱は治る病気です。
今回も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
うつ病の方の就職支援サイトを見てみる
コメント